オフの顔
「あのう、KOUJIさんという方の名前で予約していると思うんですが……」
少し遅れて会場の店に到着して店員さんに尋ねると、「小国さ〜ん、こっちですよ〜」と声がする。こういうシチュエーションだと「いやあ〜、しばらく〜」ってな感じになるのが一般的だが、僕の第一声は、
「いやどうも、遅れまして……。けど、誰が誰だかさっぱりわからへん」
ずいぶん失礼な、そして他人が見ればなんとも奇異なひとことではないか。実は先日、東京に出張した折りに日頃ネット上でお世話になっている方々と会う機会があった。いわゆる「オフ会」というやつだ。もちろん初めて会う人ばかり。それで思わず出た第一声だったのだが、話が始まるとだんだんボード上での姿と重なってきて、旧友のように思えてくるから面白い。
そもそもの始まりは、最近アップした「QuarkXPress奮戦記vol.23」の中で、三報社印刷の柿間さんのフレックススペースに関する情報をネタにさせていただいたのと、その話の都合で「DTPフォーラム」でおなじみの「TONAN's WEB HOME」の大熊@tonanさんから以前教えていただいた情報を使ったので、それぞれにお礼のメールを出したのだった。
大熊さんからの返信の中に「一度会いたいですね」とあった。たぶん儀礼的な添え書きだっただろうし、普通なら僕も「そうですね。私も機会があればぜひお会いしたい」と、これまた儀礼的に返信するところだ。
ところが、ちょうど仕事の打ち合わせで東京出張の予定が入っていたのだった。で、
「実は東京へ行くんですよ」
「連絡ください。時間が合えば会いましょう」
「どうせなら他の方にも声をかけませんか」
「それは面白い。ぜひ会いたい」
と、一気に話が進んだ。しかし、だ。東京の人っていったい誰?
ボードでやりとりをしていても、誰がどこにお住いかなどはわからない。はっきり東京、あるいはその近くと知っていたのは数人しかなかった。そこで「DTPの壺」のKOUJIさん、「デジタル時代の組版術」の平田さん、「White Room」の難波さん、そして先の柿間さんにメールを送った。KOUJIさんがさらに東京の方に呼びかけて、「はまるDTP」の川崎さん、各ボードでおなじみのせんさん、の総勢8人が集まるオフ会が実現したのだった。
その後のことはKOUJIさんがすでにスペシャルページ「★」で書いている通りだ。ここではKOUJIさんとの重複をさけて、僕なりにみなさんの「オフの顔」のレポートをしよう。平田さん。この人、HPを立ち上げた頃に少しの間だけ自分の写真を貼っていたので最初にわかった。帽子のツバをほとんど直角に折って、昔のバンカラ風のいでたち。しかし人柄さわやか、某有名スケーターを追っかけるちょっとミーハーな人でもある。
「ここでWindowsは僕一人なんですよ」
世間のシェアとはまったく逆な関係だったが、誰もそんなことを気にしなかった。むしろ、フォントのことや文字組みのこと、EDICOLORのことなど話題はまったく共通だった。「えーっと、Mac歴は……」と僕の隣で自己紹介を始めたのはせんさん。ボードでの鋭い突っ込みから抱くイメージとちょっと違う穏やかな風貌。名刺をいただくと、さん然と輝く「DTPエキスパート」の文字。しかしこのエキスパートは終始静かだった。
モリサワのニューCIDフォントが話題になる。
「プロテクトが外れたんですよね」
「アウトラインが外れただけですよ。コピープロテクトは外れてません」
ボソッとひとこと。うーむ、やっぱするどいゾ。
帰り際、「静かでしたね」と言ったら「次の機会には話しますよ」と、これまたボソッとのたまわった。H本の組版などもやっているとHPに書いている難波さん。いかにも好きそうな人かなと思っていたらさにあらず。やや面長の好青年風。長いのは鼻の下ではなくて顔全体だった。
せんさんとは「AppleScript Users Group」を通じたつきあいもあるそうだが、あまりスクリプトの話題にはならなかったから物足りなかったかもしれない。Mac始めて1〜2年でスクリプトを書いているというから、スゴイ人だと思ってしまう。「あ、あなたが大熊さんでしょ」とつい言ってしまった大熊さんは、ちょっと石立鉄男風の雰囲気かな。HPの写真はデフォルメしてあってなんとなく怖そうだったが、ご本人は気さくかつ豪快な、僕と同年輩のおじさんだ。
「文字についてこだわる人がこんなにいるとはびっくりした」
と、それぞれのHPを見た時の印象を語る姿はしみじみとしているようで、しかし「ガハハッ」と笑い飛ばす人。
筆文字も書く大熊さんはこのごろ、活字と毛筆の止筆の部分の角度の違いに興味ありとか。フォントの形の話になると「あの文字のふところが……」と、平田さんも参戦してきた。「今日は僕ひとりネクタイをしてますが……」と柿間さん。醸し出す雰囲気はごく普通のサラリーマンで、少し丸顔の穏やかな印象だった。職場の上司の方にも声をかけていただいたそうだが、都合で「今日は私が代表です」。
出力にまわってくるデータについての書き込みを読んだ時は(実はこれがフレックススペースの情報をいただくきっかけになった)、少し「イラチ」な感じかなと思ったものだが、ご本人はいたって丸い人だった。「すると、あなたがKOUJIさん?」
「はい」
KOUJIさんはデビット伊東の雰囲気かな。「HPに写真を貼ったらそれだけでアクセスが増えるんじゃないか」との声も出た男前。さながら人生相談の感もあるKOUJIさんのところのボードだが、いつも誠実に答えているKOUJIさんはなんと、僕より10も若かった。びっくり。
東京はよくわからないからと幹事を押しつけてしまい、その上二次会が終わった後もホテルまで送っていただき、ついでにもう一軒つき合っていただいた。ありがとう。二次会から参加した川崎さん。少し後退した額には親近感を感じるところだが、思わず「おいくつですか?」と聞いてしまった。僕もそうだが、老けて見られることがけっこう多いという。
「小国さんは漫画家の弘兼なんとかいう人に似てるって言われたことありませんか?(課長島耕作とか描いてる人です)。ちょっとそんなことを思ってました」
後日お礼のメールを送ったら、こんな返信がきた。
かくいう川崎さんは、この人にパンチパーマをあてたら、えーっと、何ていったか黒人ミュージシャン(だったっけ? 思い出せない)の雰囲気。飾らない気さくな人だ。
このメンバーの中で見た目も実際も、僕が一番老けていたのはちょっとショックだった。呼びかけたが都合で参加できなかった近藤さんは、いったいどんな人なのだろう。
東京へ行くことなど珍しいことなので、次にいつ会えるかはまったくわからないが、機会があればぜひ再会したいみなさんだ。そしてもちろん、まだネット上でしか知らない多くの人たちとも。
(記/1999.4.28)
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