[QuarkXPress奮戦記 vol.24]

変更箇所保持と変更箇所消去(5)

■「保持」と「消去」の四つの原則

 ここまでから、次のような点を原則と考えて差し支えないだろう。

  1. ドキュメントページ上でマスターページアイテムを変更しなければ、「保持」でも「消去」でもマスターページがドキュメントページに反映し、マスターページを変更すれば自動的にドキュメントページも更新される。
  2. ドキュメントページ上でマスターページアイテムを変更しても、「保持」か「消去」かに関係なく、マスターページが再適用(新規適用)されるまでは、その変更が維持される。
  3. 「保持」のとき、ドキュメントページ上でマスターページアイテムを変更しても、マスターページの再適用(新規適用)でその旧アイテムは削除されず、新たにマスターページアイテムが背面に追加される。
  4. 「消去」のとき、ドキュメントページ上でマスターページアイテムを変更すれば、マスターページの再適用(新規適用)でその旧アイテムは削除され、マスターページアイテムと入れ替わる。

 この関係を、「保持」と「消去」別に、ドキュメント上でのマスターページアイテムの扱いの違いにより、表示されるアイテムがどう変わるかを示すと、次の表のようになる。Mはマスターページアイテム、Dはそれを変更したドキュメントアイテムとし、マスター再適用には新規適用も含む。

選択モード保 持消 去
マスターアイテムの扱い無変更変 更無変更変 更
表示
アイテム
通 常 時MDMD
マスター再適用時MD & MMM

 この設定の対象は「変更箇所」なのだから、無変更なら「保持」でも「消去」でも同じなのは当然だ。
 したがって、常にマスターページアイテムを使用するのなら、アイテムを変更しない限り、設定は「保持」でも「消去」でもどちらでもよいということになる。
 実は私が「Gordian Knot」の連載2回目で最も推奨したかったのは、このように常にマスターページアイテムを使用する、ドキュメント上ではそれを変更しなくてもよいマスターページの作り方、運用方法だった。
 またここから、マスターページアイテムをベースにしてドキュメント上で加工する場合の注意点も見えてくる。
 加工は必要があってするわけだから、それは維持されてほしい。維持するためには、マスターページを再適用したり新規適用しなければよい、ということになる。
 しかもこれは「保持」か「消去」かよりも重要だということが上の表からもわかる。再適用なり新規適用すれば、「保持」ならもはや不要となるマスターページアイテムとダブるし、「消去」ならせっかく加工したものが削除されてしまうからだ。

■マスターページはいつ再適用されるのか

 すると、いつマスターページが再適用されるのかが問題になるが、それは次の二つの場合だ。

  1. 手動で強制的に再適用する場合
  2. 見開きマスターを使用していて、ページ移動や追加・削除などにより適用すべき左右のマスターが入れ替わった場合

 これは「Gordian Knot」での私の指摘と渋谷氏のメールでの指摘が同じだったから、たぶん正解だろう。したがってまず、シングルマスターを使用している場合は、手動で再適用しない限り勝手に再適用されることはないといえよう。
 問題は見開きマスターを使用する場合だが、これは次のように整理できる。

  1. 見開き2ページ単位で左右を入れ替えると、その2ページだけマスターページが再適用される。
  2. ページを奇数単位で挿入または削除した場合は、以後の全ページで左右が入れ替わり、マスターページが再適用される。
  3. テキストチェーンの最後が偶数ページ(つまり見開きの片側)の場合、テキストのオーバーフローによりページが自動的に追加挿入されると、以後の全ページで左右が入れ替わり、マスターページが再適用される。

 特に2と3の場合は予期しない再適用につながることが多い。
 最も簡単な対策は、左右のマスターの版面をオフセットしないでセンターに同じように作ることだが、ノンブルや柱の位置なども含め、実際問題としてこれは難しい場合の方が多い。
 そこで、見開き2ページ単位でのページ操作を基本にすることがまずは堅実だろう。
 また私は、一度全体のテキストを流し込んだら一般環境設定の「自動ページ挿入」を「オフ」にしている。テキストがオーバーフローしたときのページ追加を避けるためだ。マスターを再適用されるよりも、手動でページ追加をする方が手間が少なくて済む。
 手動で追加・削除する場合の留意点はvol.4の(5)で少し紹介しているので参考にしていただきたい。

 ここまでは一つのマスターページアイテムで検討してきたが、実際にはさまざまなアイテムが配置されるわけだから、もう少し実状に即して考えてみよう。


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