京都は伏見だけでも20を超える酒蔵がある酒どころ。そんな京都府内の地酒を飲みながら、リアルタイムで綴るお酒の話。
おおむね月1更新。飲み手・書き手=小国文男
もしかしたらこのお酒は、3月の蔵見学の折にタンクから汲んだ醪(モロミ)を飲ませていただいた、まさにそのお酒かもしれない。記録によれば、それは全国新酒鑑評会に出品予定のタンクということだったからだ。
「お酒の色は緑色なんですよ」
先日の油長さんでの蔵講座の講師は、「蒼空」の蔵元、藤岡酒造さんだった。これはその時の藤岡さんの言葉だ。
ちょっと印象的だったので、かねてより飲みたいと思っていた純米大吟醸、それも今年の春に絞ったばかりの生酒を買って帰り、改めて見てみた。本当に淡い緑色だった。
先日もまた油長さんの企画で酒蔵見学があり、松本酒造に行ってきた。なので今回は、「日出盛」の純米大吟醸を飲んでみようと思っていた。それが看板銘柄だと思っていたのと、以前にこのコーナーでも「桃の滴」純米吟醸しぼりたてを飲んでいたからだ。
口に含んだ瞬間「やっぱりそうや」と思った。このお酒は冷やし過ぎない方がはるかに旨い。飲む前1時間あまり、冷蔵庫から出していたのだ。おだやかな吟醸香に包まれたやわらかい液体が、心地よく喉に流れ落ちていった。
お酒は通常、絞ったあとに一度火入れをして貯蔵・熟成し、ひと夏越した秋に再び火入れをして瓶詰め・出荷されるという。だから普通は、秋に出回るのが新しいお酒だ。
このとき、火入れをせずに冷やのまま瓶詰めするお酒を、特に「ひやおろし」と呼ぶという。